ヒト組織における結腸直腸腹膜転移由来の細胞外マトリックスの生物学的特性と機械的特性の間の相関関係

Scientific Reports volume 13、記事番号: 12175 (2023) この記事を引用

腹膜転移 (PM) は結腸直腸癌 (CRC) の一般的な播種経路であり、依然として予後不良の致死性疾患です。 細胞外マトリックス (ECM) の特性は、がんの発生において重要です。 CRC-PM の開発を理解するには、その変更を研究することが重要です。 私たちは、原子間力顕微鏡 (AFM) によって正常および腫瘍性 PM のヒトサンプルに由来する ECM の弾性特性を研究しました。 その結果は、患者の臨床データおよび転移拡大に関連する ECM 成分の発現と相関していました。 我々は、PMの進行にはECMの硬化、がん関連線維芽細胞（CAF）活性の増加、腫瘍性マトリックスの沈着と架橋の増加が伴うことを示す。 一方、同じスケールの腫瘍性 ECM には、より柔らかい領域も見られます。 我々の結果は、正常な ECM の局所的な変化が、浸潤した転移細胞の腫瘍からの増殖と拡散の土壌を作り出す可能性があるという仮説を裏付けています。 私たちは、ECMの機械的特性（正常なECMと腫瘍性ECMの間の相対的な硬化）と、年齢、性別、BRAFおよびKRAS遺伝子のタンパク質活性化変異の有無、腫瘍グレードなどの患者の臨床データとの間に相関関係があることを発見しました。 我々の発見は、PM-ECM の機械的表現型解析が腫瘍の発生を予測する可能性があることを示唆しています。

腹膜転移（PM）は、結腸直腸がん（CRC）患者の約 4 人に 1 人が罹患しています1。 PM の発生は、腹膜転移カスケードとしても知られるプロセス 2、3 を介して、がん細胞が原発腫瘍から腹膜腔 2 に播種するいくつかの段階によって特徴付けられます。 腹膜に定着するには、腫瘍細胞が原発腫瘍からの剥離から細胞外マトリックス (ECM) に浸潤し、中皮下の結合組織に付着して、好ましい宿主反応を受けることができなければなりません 2。

ECM は組織微小環境の必須の無細胞要素であり、組織の恒常性におけるいくつかのプロセスで重要な役割を果たしています4。 ECM は組織の三次元 (3D) 構造を決定し、機械的および生化学的なサポートを提供し、細胞間および細胞-マトリックスのコミュニケーションと細胞移動において主要な役割を果たします 4,5。 さらに、過去数十年間で、がんの進行における ECM の重要な役割が明確に実証されました 6、7、8、9、10、11。

細胞外微小環境は、水、さまざまな線維性タンパク質（つまり、コラーゲン、エラスチン、ラミニン、フィブロネクチン）、プロテオグリカン、糖タンパク質、および多糖類で構成されています。 特定の組織の ECM は独自の構成とトポロジーを持ち、その結果、各器官と組織の生化学的および機械的特性が発達します 1,4,5。

ECM は組織の動的な要素と考えることができます。ECM は、共有結合および非共有結合による修飾を介して、その組成のいくつかの変化や自身の構成要素の再配置を受けるため、組織の発生や重度の疾患における細胞活性に関連します。がんの進行5、12。

ECM における機械的変化と生化学的変化は両方とも、成長因子、ホルモン、サイトカイン、メタロプロテイナーゼ (MMP) によって制御されています6。 ECM の弾性特性は、特定の生化学的因子の活性とともに、組織の恒常性、細胞運命、細胞接着、遊走、細胞周期の進行、分化、アクチン関連の細胞骨格の再構成と収縮において重要な役割を果たしています 6,12,13,14。 マトリックスは、粘弾性、機械的可塑性、非線形弾性などの複雑な機械的特性を示すマルチスケールの生体力学的実体です 8,15。 ECM の粘弾性および生化学的特性は、主にコラーゲンとその架橋度によって決まります 8,15。 ECM の AFM 研究により、この組織化合物の粘弾性特性が確認されました 16,17。 細胞が ECM の静的な機械的特性ではなく、粘弾性を感知して反応する可能性があるという証拠が増えています 15。